NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第84回コラム(Sep/2009)
新しいワインとの出会い
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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初めてニュージーランドワインを飲んだのは2003年5月 - そのとき私は映画『ロード・オブ・ザ・リング』好きが高じて、ロケ地巡りのツアーで初めてニュージーランドを訪れていました。ウェリントンから北上して、マーティンボローのワイナリーにランチで立ち寄った際に白ワインを試飲したのが始まりです。残念ながら、そのときの品種やどんな味わいがしたのかは殆ど覚えていません。でも、自分のなかで抱いていた「ワインは高級な飲み物」、「難しそう」、というイメージが消え去って、純粋にワインのおいしさに魅せられてしまったのが今のワイン好きに高じています。

日本に帰国してからは、ニュージーランドのワインを見つけては買って飲み、ニュージーランドワインのイベントに参加し、と一ニュージーランドワイン・ファンとして親しんできました。そして、学生時代からの夢だった語学留学、海外生活の実現、ニュージーランドワインについてもっと知りたいという思いから、昨年10月にワーキング・ホリデー・ビザを取得して、現在はオークランドに滞在しています。

その後、憧れの地・ニュージーランドで、ワイナリー巡りやヴィンヤードでの収穫作業、そして現地でのワイン講座を通じたワインの勉強、と今までやりたいと思っていたことを実現させてきた私ですが、幸運にも先月8月23日~25日までオークランドで開催されていたホスピタリティー・ニュージーランドというイベントの一つである、ワイン・ニュージーランドに参加する機会を得ました。これは、ワイン関係の業者を対象にしたワインの試飲イベントで、ニュージーランド国内、海外からのワイナリーが数多く出展し、それぞれの新作ワインをアピールする場です。今年は国内から98、海外から38の計136のワイナリーが出展していました。

私の一番好きな品種はシャルドネなのですが、最初にワインを楽しみだした頃、最も親しんでいた品種であったことが大きな理由です。品種もさっぱり分からず「何を買って飲もう?」と思っていたころ、映画化もされた『ブリジット・ジョーンズの日記』という本を読み、主人公ブリジットがシャルドネを愛飲した事から「どんな味だろう?おいしいのかな?」と単純に興味を持ち飲んだのがきっかけでした。「辛口でキレがあっておいしい」と好きになり、以来シャルドネにはまるようになり、生産地の味比べを楽しむようになったのです。

ニュージーランドのシャルドネの生産地といえばギズボーン。“ニュージーランドにおけるシャルドネの首都”とも言われるほどで、前述のイベントでは「ギズボーンのシャルドネを味わいたい!」と思って楽しみにしていました。イベントの概要や参加ワイナリーの一覧等をウェブサイトで事前にチェックし、ある程度計画を立ててイベントに臨んだものの、会場に入った途端「ワイン業界の関係者用のイベントにアマチュアの私が足を踏み入れていいのだろうか」と気後れしてしまいました。落ち着きを取り戻そうと会場をひと回りした後「せっかくの機会なので難しく考えずに楽しもう!」と開き直り、何となく親しみを感じたブッシュメア・エステートというワイナリーのブースを訪れました。

ブッシュメア・エステートはイーガン家が30年以上前にはじめた、今もなお100%家族経営のワイナリーで、ギズボーンにてシャルドネをメインに、その他アロマティック品種を生産しています。ブースにはオーナーのデビッドさんとショーナ・イーガンさんがいました。ショーナさんがワインについて詳しく解説してくれ、メモを取っていると親切にも椅子まですすめてくれました。暖かいもてなし=ホスピタリティーは、まさにイベントのタイトル通りです。

このブースで2種類のシャルドネを味わった後、飲んだワインボトルの写真を撮ろうとしたときに、ふと「ヴィオニエ」と書いているボトルを発見しました。「何、これ?」と興味を抱いた私はショーナさんに、「ニュージーランドではあまり馴染みのない品種ですよね?」と聞いたところ、「よくぞ聞いてくれた」とばかりに、グラスに注いでくれ、どんな特徴を持ったワインなのかを語ってくれました。「初めての味わいだな」と感じたものの、何と味を形容していいか分からず尋ねたところ、自らもグラスにワインを注ぎ、「蜂蜜のテイストとその後にスパイシーな感じがするでしょ」、と教えてくれました。その通りでした。素人で勉強中の私にも感じられました。蜂蜜の甘さが口の中で広がりつつ、辛口でピリッとしたスパイシーな後味で終わり、「おもしろい!」と思いました。

このヴィオニエとの出会いは少なからず興奮し、感動しました。大好きなシャルドネでもなく、ソーヴィ二ョンブランのフルーティーな辛口とも違う「今まで知らなかった辛口の味わいだ!」と。

ニュージーランドでは、1993年にテ・マタ・エステートがヴィオニエの木を輸入したのが始まりで、近年ホークス・ベイやギズボーンで年々生産者・生産量ともに増えてきています。それでも、ニュージーランドワイン協会の統計によると2008年の収穫量は573トン。最も収穫量の多いソーヴィニヨン・ブランの169,613トンと比べると、その少なさは一目瞭然です。

イベント以降、ワイン・ショップに行って買おうとしても選択肢は前述した数字が示す通り、ごくわずかです。それでも2008年から、ニュージーランドの食文化を扱う雑誌『Cuisine』でニュージーランドのヴィオニエ、トップ5が選ばれるようになりました。ヴィオニエがニュージーランドで注目されてきたといえますよね。ちなみに最高の5つ星を獲得した、2008年の1位はキム・クロフォードの2007年、2009年はヴィラマリアの2008年で、栽培地はともにギズボーンです。前述のブッシュメアも4つ星の評価を得ています。まだ行ったことのない地、ギズボーンに行ってみたいというという衝動に駆られてきました。葡萄の栽培からワインの生産まで行っているワイナリーと、そうでないところもありますが、発展する可能性を秘めた‘ギズボーンのヴィオニエ’の現状を見てみたいと思います。

いつの日か世界的に「“ヴィオニエと言ったらニュージーランド”と言われる日が来たらおもしろいな」と想像を膨らませてしまう私ですが、今回のイベントをきっかけに新たに魅了された品種ヴィオニエ、今後もぜひ注目していきたいです!

2009年10月掲載
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