NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第90回コラム(Mar/2010)
コアなニュージーランドワイン ザ・変り種 その6 トレンドよりポリシー!なワイナリー後半
Text: 鈴木一平/Ippei Suzuki
鈴木一平

著者紹介

鈴木一平
Ippei Suzuki

静岡県出身。大阪で主にバーテンダーとして様々な飲食業界でワインに関わったのち、ニュージーランドで栽培・醸造学を履修。卒業後はカリフォルニアのカーネロス、オーストラリアのタスマニア、山形、ホークス・ベイ、フランスのサンセールのワイナリーで経験を積む。現在はワイン・スクールの輸入販売チーム、また講師として、ニュージーランド・ワインの輸入及び普及に関わる。ワイナリー巡りをライフワークとし、訪れたワイナリーの数は世界のべ400以上にのぼる。

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人類は皆同じ道筋をたどるようで、以前、いやつい最近までニュージーランドでも、オーストラリアでも、飲まれるワインといえばほとんどがこうした酒精強化ワインでした。時代とともにライト嗜好になって需要が減り、つくるワイナリーが激減してしまいました。いまや時代錯誤のフォーティファイド・ワインなど存在しなかったといわんばかりです。だからこそ、そんな時代なればこそ、マズランズは応援したくなる粋なワイナリーなのです。

普通のワイナリーでは、仮にあったとしても白・赤のラインナップの最後に甘口やフォーティファイド・ワイン1種というところがせいぜいです。そのため残念なことに、テイスティングされた方がただ甘くておいしいワインとだけ認識されてしまうことが多いのです。(特に甘口ワインなどはしばしば375mlの小瓶に詰められていてがさばらないことも手伝って、たくさん試飲させてもらったはいいものの、めぼしいものがなくて買うものがない時の「罪ほろぼし」に購入されている光景もよく見かけます…)事実、一人でフォーティファイドばかりたくさん購入することはまずないわけで、マズランズのように何種類も比較しながら試飲できるようなワイナリーは本当に貴重なんです。自分の稚拙な文章を読むより、実際に訪れて製法の違い、ヴィンテージの違いなどを熱意あるスタッフの説明とともに飲み比べるほうが、はるかに容易に深遠なフォーティファイド・ワインの世界を垣間見ることができるでしょう。

また酒精強化ワインはその高めのアルコール度数によって長期熟成が可能ですので、誕生年のワインが比較的探しやすく、円熟の域に達したものを通常のワインと比べかなり安く手に入れることができます。通常のワインですと半分ギャンブルのようなところもあり、注いで数秒で息絶えたり、開けた段階で既にしおれていることもあります。十何万もするワインなら精神的のみならずお財布への被害も甚大です。しかし、フォーテイファイドならまず大丈夫。こいつはこんなに元気なんだから俺も頑張ろう!ってポジティブに思えるように、自分と同じ年月を重ねたワインにはやっぱり、元気でいてほしいじゃないですか。自分のものはもちろん、ご両親の誕生年のものすらもみつかることもしばしばなので、異常な価格のボルドーの年代ワインなんかより、お手軽で気の利いたプレゼントにもってこいです。

ほとんどを失いかけてからやっとその大切さに気づき、手遅れになってから必死で守ろうとするのは人間の常。業界に先導されてブームが生まれ、おばあちゃんの着ていたような服がまた孫の時代で流行したり、眉毛も太くなったり細くなったり。最近では復活後絶好調のハイボールのポスターがない居酒屋もないくらいです。だからフォーティファイドもきっと近い将来その良さを見直す人がもっと増えると信じています。ビールを飲むには寒すぎる季節、仕事からくったくたで帰ってきて、ため息まじりにソファーにどすんと腰を下ろしたとき、サイドテーブルに濃密なシェリーと小っさなグラスがいてくれることだけで、笑顔になれたりするんです。オークランドから少し足をのばして、気まぐれなワインちゃんよりもあなたを裏切らない新しいパートナーを、探してみませんか?

2010年4月掲載
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