NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第92回コラム(May/2010)
ワイナリー巡り in ホークス・ベイ
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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ワインのテイスティングはもちろん、自分の目でワイナリーの雰囲気や地域の特徴を確かめたり、人との出会いもあったり、いろいろありますよね。偉そうに語れるほど多くのワイナリーを巡ってはいませんが、ワイナリーを訪れると色々な発見ができるので、ワイナリー巡りは大好きです!

4月は収穫期にあたり、私にとってスクール・ホリデー中でもあり、ワイナリー巡りには絶好の時期。日本から家族が来たこともあって、ホークス・ベイのワイナリー・ツアーに参加してきました。そして以前から、ぜひ訪れたいと切望していた老舗のワイナリー、テ・マタ・エステートで、ちょっと嬉しいというか、「えっ!?」と思えるワインと出会いました!

そのワインとは…「ガメイ・ノワール」です。ワイン好きの皆さんはよくご存知だと思いますが、あの毎年お祭り騒ぎをされる11月第3週の木曜日に解禁の「ボジョレー・ヌーヴォー」の品種がガメイです。もしかしたら私たち日本人にとっては一番馴染みがある品種かもしれないですね。それにしてもニュージーランドにガメイとは意外でした…フランスのボジョレー地区のみで作られている品種、と勝手に思いこんでいました…

気になったので自分で調べてみました。ちょうど、この時期に学校の課題でニュージーランドのワイン業界の概要をレポートで書いたので統計資料が手元にあったのです。でもガメイは見当たりませんでした。その他赤ワインという分類のなかにガメイは入っているのでしょう。私が以前書いたヴィオニエも生産量が少なかった以前は品種名として統計資料のなかに登場していませんでしたから。

その後、別の課題に取り組んでいるとき、ニュージーランドの有名なワイン評論家マイケル・クーパー氏の本に、テ・マタ・エステートのガメイのことが記載されていたので読みました。それによると、ニュージーランドでのガメイの栽培面積は2005年から2009年にかけて9ヘクタールから12ヘクタールに増加。やはりニュージーランドではまだまだ存在感のないレアな品種なのです。

ところで、なぜ私がこんなにガメイ品種に関心がいったかというと、ちゃんと訳はあります。去年日本に帰国していた際に、「ワインを売る仕事がしたい!」という単純な気持ちから、ボジョレー・ヌーヴォーの販売のアルバイトを1日しました。商品を売るためには、その商品についての知識も必要ですし、お客さんに勧めるには気持ちも大事です。売る商品に思い入れ(好きで魅力的に感じている)があったほうが良いと私は信じているので、これを機にボジョレー・ヌーヴォーについて関心を抱くようになりました。

今までも何回かボジョレー・ヌーヴォーは買って飲んでいましたが、値段のわりに特別美味しいとも感じなかったし、それならニュージーランド・ワインを!と思っていました。ところが販売終了後に買って飲んでみたら、宣伝文句通りに、2009年のボジョレー・ヌーヴォーは当たり年でした。フルーティーで、ライト・ボディとは書いてあるものの、しっかりとした、こくのある飲み口で、初めてボジョレー・ヌーヴォーを「おいしい!」と思いました。

そして、最近読み始めた本、『現代ワインの挑戦者たち』(山田健著)を見て、また驚きました。ボジョレーの帝王と呼ばれるジョルジュ・デュブッフ氏について書いてあったのです。他ならぬデュブッフ氏の作ったボジョレー・ヌーヴォーを私は売っていました。何てタイムリー!日本語の読み物が欲しくて、昔買っていたこの本を思い出して、日本から持ってきてもらったのです。ちょうど学校でもワインの醸造学について勉強しはじめたこともあり、本に書いてあるボジョレーの独特の醸造法、マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)についての理解もしやすく、氏のワイン作りへの情熱や人柄等、非常に興味深く読むことができました。ちなみに前述のクーパー氏の著書によると、テ・マタ・エステートもボジョレーの伝統的な製法にのっとって作っているとのこと。ガメイ種やボジョレーについてのイメージがグッと変わると同時に、なぜテ・マタ・エステートがニュージーランドで作りはじめるようになったかについて、ニュージーランドでの今後の可能性についても知りたくなってきました。今は学校の課題に追われているので、次のホリデーまたは少し時間のあるときに調べてみたいと思います。

ちなみにテ・マタ・エステートはとても興味深いワイナリーです。以前も触れたようにヴィオニエを初めてニュージーランドで作ったのも、このワイナリー。ニュージーランド航空の機内誌に載っていた記事によると、カベルネ・ソーヴィニヨン・ブランとメルローのブレンドワインを初めて作ったのも、テ・マタ・エステートだそうです。実験的なワインを造る先駆者なワイナリーといえるでしょうね。また2006年のエリザベス女王の誕生会にシャルドネが出されたことも有名です。これからもぜひ注目していきたいと思います。

ホークス・ベイには魅力的なワイナリー、また新鮮に感じたワイン、ともにまだまだ多数あります。次の機会にまたご紹介できれば、と思います。このサイトにも紹介されている日本人ガイドのワイナリー・ツアーに参加しましたが、事前に相談に伺って訪問ワイナリーのリクエストを最大限に叶えていただき、大満足の1日が過ごせました。以前はワイナリー・ツアーといったら、英語ガイドのツアーに1人で参加して、英語力の向上をはかることに必死でした…しかし日本語で何でも話せるのはリラックスできます。本当に楽しかったです。

次のホリデーもワイナリー巡りを!と考えています。行き先は未見の地、マールボロか、ギズボーンか、オークランド近郊マタカナか、或いは最初にニュージーランド・ワインのおいしさに目覚めたマーティンボローか…考えるだけでもワクワクします。それを楽しみに前期の最大の山場=テストを乗りきろう!と思います。

2010年6月掲載
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