NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第96回コラム(Sep/2010)
ワイン留学 その2
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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「ワイン・マーケティングって何を勉強するの?」と、よく聞かれます。そして「ワインについて詳しくなったでしょう?」とも、よく言われますが、どうでしょうか…?もちろんブドウの栽培からワインの醸造過程について勉強したので概要は覚えました。でもソムリエになるような勉強をしているわけではないので、まだまだワインについての知識は「これから!」という感じです。

実際には前にもコラムで書いたとおりに、前期はビジネスの勉強のほうがメインだったので、マーケティング、マネジメントやセールスの知識のほうが確実に身につきました。そして、ビジネスの勉強(特にアサインメントと呼ばれる課題)を通じてニュージーランドのワイナリーについてのマーケティングや、ワインを販売することについて考えていきました。とても良い勉強内容です。

しかし、実際に勉強するとなると、とても大変な作業です…。前期の4科目ではマネジメントを除く3科目で、合計5つのアサインメントを課されましたが、一つとして簡単なものはありませんでした。コラムというより体験記になりますが、今回は私が最も苦戦したセールス・プラクティスという科目のアサインメントについてご紹介したいと思います。

まずテーマですが、初めてホークス・ベイでビジネスを始める某ワイナリーの営業担当者になったつもりでホークス・ベイ地域における最初の半年間のワインのセールス・プランを立て計画書を提出、その後プレゼンをクラスで行うというものです。この課題は3月の中旬に出されて5月11日朝8時15分が提出期限。猶予は2ヶ月あったものの、実際には3月末に各科目でテストがあり、4月の2週間のホリデー中も別のアサインメントがあり、結局開始したのは4月の下旬からでした。もらったときから、ずっとこの課題が完成できるか不安でした。なぜなら英語力もそれほどない、ホークス・ベイ地域についての知識もない、セールスの知識もほぼない(会社員時代に営業・経理事務をしていたので営業の仕事をサポート、営業内容についての理解はありましたが)。あるのは、「必ずやり遂げる」と決めた強い意志と、私を信じて応援してくれる家族や友達、周囲の人たちの支えのみ。でも、これが肝心なのです。がんばれる原動力になりました。

最初に、与えられた課題の内容を正しく理解することから始まります。何度も何度も課題の指示書を読み直しました。完璧に理解していないと、方向性が掴めないし良い評価ものぞめません。自分一人の解釈では無理、というか理解できなかったので学校の図書館の学習サービス担当者(アサインメントの添削や学習のアドバイスをしてくれるサービスがEITにはあるのです)に聞くほか、クラスメートや先生にも聞きました。さすがに、この課題は難しいので授業中に過去の生徒の書いた見本を見ることができ、ヒントも得ました。

そして電話帳やインターネットで顧客になりそうな見込みのあるレストランや酒屋、小売店等を探して、データ・ベース作りから始めましたが、この作業は時間がかかりました。電話帳ではイメージが掴みにくいので、インターネットで詳しい情報を得ていかなくてはいけません。なぜなら作ったリスト(私が選んだ見込み先は60件)の中からABC分析というメソッドを使って、有望な見込み先順にランク付けをしていかなくてはならないからです。さらに有望なAグループの中から10件を選び、なぜ有望なのか理由を書くことが求められます。とにかく実際に行ったこともないレストラン等を分類していくのは大変でした。

その後、ホークス・ベイ地域のネイピア、ヘイスティングス、ハブロック・ノースという町についての分析、どのようなビジネス・チャンスがあるかについて、を論述。そしてテキストに基づいて綿密なセールス・プランを作り上げていきました。価格設定から最終的な売上目標、先にも述べたようにABC分析でランク付けした顧客見込み先ごとの、セールスの電話計画と目標設定、訪問スケジュール、どのようなモチベーションでセールスして目標を達成していくか…。

この課題に取り組んでいるときは毎日が必死でした。そして色々な人にアドバイスを求め、助けてもらいました。友人知人はもちろん、家から近所のワイナリーのマーケティング担当者にもアポイントをとって相談に行きました。それでも最後の最後まで自分の解釈があっているか不安でした。提出前日の夕方に学校の図書館に行ったら、やはりクラスメートたちが「分からない。これで良いのかな?」と相談しあっていました。みんな不確かだったようで安心しました。そして提出当日の明け方近くまで必死で書き上げ期限通りに提出。ちなみに期限に間に合わないと減点になります。そしてゆっくり休むひまもなく翌々日のプレゼン準備へ。

私はワインと日本食のマッチングをコンセプトにおいていたので、私の選んだワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)のテイスティングとともに海外での日本食の代名詞ともいえる‘Sushi’を一緒に味わってもらうことにしました。

本やインターネットでワインと料理、食材の相性について調べ、寿司の具もこだわりました。新鮮な野菜、サーモン、地元産のチーズを使い、酢もキウィ好みの少し甘めの加減にしました(この作業は楽しいと同時に勉強になりました)。

その他の日本食とワインのマッチングについての参考資料を作成し、パワーポイントも作りました。そしてプレゼンの台本も前夜作り、当日図書館で添削をしてもらってアドバイスももらいました。しかし、英語でのプレゼンは難しかったです。良くも悪くも自分らしさが出ました。苦手なスピーキングを補おうと、その他の設定はがんばったものの、結局話すことでつまずき、無事プレゼンを終えたものの時間オーバー。台本を用意したので「何とかなるだろう」と甘くみていました。緊張はしますが、人前で話すことにはある程度経験があるので抵抗はそれほどなかったのです。終わったあとに悔いが残りました。もう少しプレゼンの練習をしていれば…と。そして二度とこんな思いはしたくない、と心に誓いました。

結果はプレゼンの評価は妥当でまあまあといった感じでしたが、計画書は予想を上回る高評価でした。クラスの最高点には及ばないものの、それに迫る点数がとれました。最高にうれしかったです。「自分に負けないように。」これだけは今まで、どんな状況に置かれても心がけてきました。自分を信じて諦めないで努力することはシンプルですが大切なことです。このアサインメントについては、今までの努力が実ったかな、という感じです。そして少し自信もつきました。私のような留学生でも頑張ればキウィと同じ土俵にたてるのです。

早いもので留学生活の半分が終わってしまいましたが、これからも学校の勉強に限らず色々なことを学んで吸収していきたいです。後期は新たな4科目が始まります。楽しみですし、また頑張ります!どんなことを勉強しているのか、ぜひ次のコラムでご紹介できればと思います。

2010年10月掲載
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