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皆さん、こんにちは。
今回は世界の多くのワイン産地において素晴らしいヴィンテージであった1996年のワインが勢ぞろいした日の事をお話したいと思います。1996年、年号では平成8年。25年モノのワイン達はポケモンと同い年だそうです。なんだか親しみが湧きますね。
この年、私は既にニュージーランドに住み始めて2年が経っていましたが、首相はまだジム・ボルジャー氏と言う男性でした。ニュージーランドと言えば『世界で初めて女性に参政権(投票権)を与えた国』としても有名ですよね。その運動の先駆者となったのは現在の10ドル札の肖像画でお馴染みの ケイト・シェパード氏です。25年前を振り返ってみると、その後のニュージーランド社会の変貌は女性の活躍に顕著に表れているなあと思わざるを得ません。 ジェニー・シプリー氏が初めての女性首相になったのはその翌年、1期(3年間)務めた後に与党は変われど、またもや女性であるヘレン・クラーク氏が首相として3期続投。勿論、現在は3人目の女性首相である ジャシンダ・アーダーン氏が既に2期目を務めてくれています。アーダーン氏は37歳の若さで首相になったばかりでなく、任期中に女児 Neve ちゃんを出産、そして新型コロナウイルスの感染をしっかり押さえている事でも更に世界的に知名度が上がった様です。この夏にはギズボーンにてパートナーのクラーク・ゲイフォード氏と結婚されるそうで華やいだニュースが飛び交っていました。
1998年にはクリスティーン・フレッチャー氏がオークランドで2人目の女性市長になったり、Kiwiの友人から『Bic Runga の音楽は良いよ~!聴いてごらん?』と教えられたのもこのヴィンテージの頃だったなあ。彼女はチャイニーズ・マレーシアンの母と、マオリの父のもとにクライストチャーチで生まれているので、人種やカルチャーの融合や活躍が目につきだした私は、ひょんな事からこの国に永住する事になったが、なかなか良い国だなあとつくづく噛み締めたものです。
現在では更に『マルチカルチャーの繁栄と共存』がNGOのみならず政府レベルでも推進されていて、これからますます住みやすくなってゆく事が期待されます。
この国で造られるワインも質がグングンと上がっていますし、各ワイン産地への国内旅行も含めオークランドで暮らす来たる日々にヴィンテージごとの楽しみを添えてくれる事でしょう。
さて、本題の1996年のワインを楽しんだのはオークランドの街の中心部にあるLe Chefと言うフレンチ・ビストロにて。このレストランは今では通りを挟んで両側に席のある作りになっていますが、片側を借り切って5月のある月曜日の夜に、14名のワイン好きの友人が集まりました。
今月のテーマである『1996 vintage at 25 years』は外すことのできないほど明確なテーマです。過去には産地がテーマだったりすると、該当するワインを探しやすくしたりするために、少~し範囲を広げてワインを持ち寄るような事も行われましたが、今回は北半球であれ南半球であれ、1996年産のワインがテーマです。それぞれが1本或いは3本持参した結果、合計16本の試飲会となりました。
16本は多い様でもカテゴリー分けすると少し偏りは出ますね。生産国としてはフランス、イタリア、そしてニュージーランドとオーストラリアのワインが集まりました。勢ぞろいしたワインをご紹介しましょう。
フランス シャンパーニュ:
Dom Perignon
フランス ブルゴーニュ 赤:
Dm Chandon de Brialles - Pernand Vergelesses Premier Cru Ile de Vergelesses Dm Robert Chevillion Nuits St George Premier Cru Les Vaucrains
フランス ボルドー 赤:
Ch Leoville Barton Ch Lynch Bages Ch La Mission Haut-Brion
NZ カベルネ・ソーヴィニヨンブレンドのボルドー・ブレンド:
Esk Valley Reserve Merlot, Malbec, Cabernet,
Stoneyridge Larose
Te Mata Coleraine
イタリア バローロ:
Cordero di Montezemolo Monfalletto Dominico Clerico Percristina Elio Altare Vigneto Arborina
オーストラリア シラーズ:
Penfolds St Henri Tyrrells Brokenback Shiraz Wendouree Shiraz
オーストラリア デザートワイン:
De Bortoli Noble One
さて、先ずは当然ドンペリにて乾杯です!
柔らかいオレンジがかった透き通るような黄色の液体の中に細かい泡が絶え間なく上がっていて、ハニーの香りと特別感のある酸味が底辺に流れる甘さと溶け合ってとても印象的でした。少し時間を置くとトースティーさが表に出てきて増々美味しくなりました。
シャトー・レオヴィル・バルトンは何度か飲んだことのあるメドック第2級ですが、25年を経てもまだ綺麗で少し年季の入ったクリムゾン・カラーを讃えていました。カベルネ・ソーヴィニヨン72%、メルロー20%そしてカベルネ・フラン8%とカベルネ主体ですが、カベルネのタンニンは柔らかく練れていて、酸味と奥深さを持ったバランスの良い味わいはやはりとても美味しいと感じました。
けれどもこの日のボルドーの中での一番のお気に入りはシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンでした。香りの中だけに感じる苦みが特徴的でしたが、何といってもroasted grainの香りが『この赤は美味しいよ!』とグラスの中からささやいているのです!玄米茶を美味しいと感じる方、或いはパンのミミ(端)の方が白い部分よりも好きな方ならきっとこの感覚を分かっていただけると思います。カベルネ・ソーヴィニヨン47%にメルロー43%プラスアルファのセパージュで、まだまだしっかりとしたタンニンが舌の上でざらざらするような力強さを感じさせ、同じワインを5年後や10年後に味わってみたい、と思わせてくれました。
ニュージーランド産のボルドーブレンドは言わずと知れた長熟タイプが多くなってきています。今回は北島のホークス・ベイとワイヘキ島からの3本が集まりました。
4コースの食事中、丁度カスレに続いてラムがサーヴされた時に驚きの発見がありました。ワインだけを飲んだ時には旨味も感じて細かく溶け合う様なタンニンを楽しめたストーニーリッジのラローズが、何とこの日のラム肉料理とは合わずに消されてしまったのです!ヴェルデソースがかかっているだけの比較的シンプルな料理でしたが、これが意外で『あ~ラローズの25年モノは単体で楽しみたいなあ。』と思いました。
因みにこのワイン自体は樽などから来る鰹節の様な香りと塩気の方をより強く感じるミネラルさがあり、それだけで楽しめばこの上なく美味しいものです。一方でこのラム肉料理にぴったり合ったのがエスクヴァレーのリザーブです。あまり透明感の無い濃いレンガ色のこのワインは、ホークス・ベイの銘醸地であるギムレット・グラヴェルズのブドウから作られています。マルベックの粗さがラムにマッチしたのでしょうね。
バローロ3本はネッビオーロの25年モノにしてはあまりオレンジ色がかかっておらずに少し意外でした。けれども、どのワインも ぶどう~! と叫んでいるような強い果実味と甘みのバックボーンに支えられ、柔らかさを増したタンニンが心地よくビーフとの二重奏を奏でている感じでした。
タンニンの形容には日本語の擬態語はとても便利ですね。私はコルデロ ディ モンテツェモロには『まだざらざらするタンニン』、ドミニコ クレリコのバローロ・ペルクリスティーナには『まだクリクリと舌の上で感じるタンニン』そしてエリオ・アルターレのバローロ・ヴィネート・アルボリーナには『ジュリジュリ感じるタンニン』と書いていました。これを完璧に英語で表現してみたい!
14名なので一人50mlずつをメモリの入ったテイスティンググラスで測りながら自分のグラスに入れてゆきますが、それでもかなりの量をスピトゥーンに捨てました。あ~勿体ない!ウチならこれでコック・オー・ヴァンかドーブ・ド・ブッフ(ビーフ・ブルギニオン)でも作るのに。いや、それも勿体ないのでゆっくりグラスの中での変化を楽しみながら飲めるのに・・・(涙)
そんなこんなでいつもの事ですが、メモを取ったり写真を撮ったり、味わって飲んだり食事の方も食べながら会話に興ずる、というとても忙しく楽しい時間はあっという間に過ぎ去りました。友人とUberをシェアして帰路についた頃にはウイーク・デーの初日という事もあり町中でも人がかなり少なくなっていました。
1996年のワインを手に取る前にこの年には何が起こっていたのかしら、と調べてみました。アトランタオリンピックが開催されていたり、原爆ドームと厳島神社が世界文化遺産に登録されていました。映画では『shall we ダンス』のオリジナル日本版、そして『ミッション・インポシブル』、更には巨大竜巻の脅威を描いた『ツイスター』などを観ていた年です。懐かしいですね。けれども25年も前になるのか、と感無量にもなります。
年を重ねるほどに時間の経過を早く感じる様になる、とはよく知られたことですが、それを当てはめるとセラリングしたワインの熟成を待つのもそう苦ではなくなりますね。それぞれのワインの作られた年や場所の事、人の手の苦労、そんなことに想いを馳せながら今日のあなたの一杯をゆっくりと楽しんでください。