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1年経つのは早いもので、モアナ・パークで2回目の収穫になりました。2021年のニュージーランドワイン業界の一番大きなニュースは、マールボロ地区が霜の害もあり、20%と大幅に収量が減ってしまったことです。ホークス・ベイは霜害は無かったものの、夏の間にほとんど雨が降らなかったために5%の収量減となりましたが、その分濃縮されて品質的には良いものが収穫されました。
2021ヴィンテージの気候は以下の通りです。
2020年の冬(6-8月)はニュージーランドの観測史上最も暖かい冬となりました。ただ、作物に影響するほどではなく、雨量も平均的で剪定などに影響が出ることもありませんでした。
春に関しては、引き続き暖かい気候が続き、開花は例年より5~10日ほど早くなりました。ただ、天候が不順で雨が多く開花期のばらつきが見られました。そして、マールボロ地区では遅霜が発生し収量に大きな影響を与えました。ホークス・ベイではそのような被害は無く、まずまず順調なスタートを切りました。
夏に入ってからは降雨量が少なくなり、特にホークス・ベイ地区では例年の50%以下という状況で、色づき始めたブドウの生育も遅れがちになりました。平均気温としては例年通りでしたが、最高気温はあまり高くなく、温暖な状態で夏を過ごせました。そのため病気などの心配はなく、小粒ながら味わいのしっかりしたブドウが期待されました。
秋も暖かい気候が続きました。待ちに待った収穫時期です。また、秋全体としては降雨量は例年以下だったものの、集中豪雨が数回あり、我が家も浸水しました。雨自体はどれも1日で終わるものでしたので収穫には大きな影響はありませんでした。
全体としては、春先の天候不順と夏の少雨の影響が大きく、収量は少ないものの、スパイシーでフレッシュ感のあるブドウが収穫できました。「2021年のブドウは小粒でピリリとフレッシュ」なブドウとなりました。
ワインづくりに関してですが、去年から導入したPellenc社の選果破砕除梗機は今年も大活躍で、我々のような少人数でワイン造りをしているところでは、品質向上に大きな役割を果たします。手作り感の高いワインですが、こういう機械の進歩があってこそ良いワインができます。簡単に言えば人の手で行う場合、“時間がかかる=酸化が進む”といったことを防ぐことができます。
発酵は順調に進みました。今は全てのワインが主発酵、マロラクティック発酵を終え、熟成の時を迎えています。
シャルドネは、樽の中で、ゆっくりと変化を続けます。週に1回のステアリング(かき混ぜ)は味わいに複雑さを付け加えるための重要な工程です。樽の栓を抜き、バーを入れかき混ぜるときに出てくる香りによって、熟成の度合いを判断します。毎週少しづつ香りが変わってくるのを確認しながら、作業を続けます。
赤ワインは、数か月に一回、中身をすべてタンクに移して品質を均一化し、樽を洗浄、再び元に戻すということを繰り返します。この中で、最高の物だけトップランクのワインに使うよう選別していきます。仲間とともに何度も試飲を繰り返していきます。
2021年のシャルドネは特に楽しみなワインです。夏の暑すぎなかった天候はシャルドネに活き活きとした酸味を残しました。雨が少ない分濃縮した味わいとなり、完熟した味わいとなった2020年よりも複雑でエッジのきいた味わいになっている感じがします。
赤ワイン品種、特にメルローは同様に良い出来でしたが、色の感じは2020年のほうがしっかりと出ています。カベルネ・フランも楽しみです。ゆっくりと長く続いた生育期間が、特徴のあるスパイシーな味わいをしっかりと出しています。あまりメジャーな品種ではありませんが、ブレンドに使うととても良いアクセントになります。
最後にシラーです。ホークス・ベイではとても期待している品種で、オーストラリアのシラーズとは違う、フレッシュ感のあるものが出来上がります。
9月はニュージーランドの冬の終わり、畑ではいよいよ芽を吹きだすところです。2022年の収穫はどうなるのでしょうか?
ところで、一つお知らせがあります。ついに私が造ったワインが日本でも発売されることとなりました。MUTU“睦”というブランドで、シャルドネとメルロ/カベルネ・フランの2種類です。二つともホークス・ベイを代表する品種で、ブドウの個性を大切にしつつも日本の食のシーンをイメージしながら造りました。
今年の秋には日本に到着する予定で、正規輸入代理店は都光様となります。
是非ご期待ください。