NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
ニュージーランドのオーガニック、サステイナブル、そして自然派ワイン
第213回コラム(Nov/2020)
ニュージーランドのオーガニック、サステイナブル、そして自然派ワイン
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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オーガニックワインワインと聞くと何を思い浮かべるでしょうか?オーガニックワイン=有機栽培だから体に良さそう?有機栽培だからブドウも健康で味が良さそう?実はオーガニックワインにも色々段階があり、それによって認証される過程や厳しさも変わってくるのです。まずニュージーランドではよくSustainable Certified(サステイナブル認証)の畑を見かけます。サステイナブルは最近よく聞かれる単語ですが、日本語では「持続可能な」と言う意味になります。

NZW

厳密にはオーガニックワインではありませんが、ニュージーランドではワイン産業に関わりのある水、廃棄物、害虫と病害、土壌、人、そして気候変化にフォーカスして様々な規定を設けそれをクリアしたブドウ畑だけがサステイナブル認証を呼称できます。なんと現在ニュージーランドでは全体の97パーセントがこのサステイナブル認証を得ており、これだけでもニュージーランドがいかに環境、そして現在だけではなく将来を見据えてブドウ栽培を行っているかが分かります。

ただ、サステイナブル農法はオーガニックワイン農法ではないので、必要な農薬の散布は認められています。オーガニックワインの畑と認められているのは全体の10パーセント。オーガニックワインはもちろん化学農薬の散布は禁止されていてBioGroとAsureQualityが認可している畑だけがオーガニックと呼べます。通常の畑からオーガニックを始めて最低でも3年経たないと認可がおりないのと、農薬が使えないのでそれに代わる手間などのため、中には一部をオーガニックで栽培している生産者もいます。そして最後にBiodynamics(バイオダイナミックス)と言う農法もあります。これは基本オーガニックワイン農法なのですが、特別に配合した有機の調合剤を散布したり太陽や月の満ち欠けに従って収穫をしたり調合剤を散布したりする農法です。ニュージーランドではそれほど多くはありませんがヨーロッパでおなじみのDemeterが認可します。

サステイナブル農法が97パーセントと言うことは、私たちが普段スーパーや酒屋で見かけるワインの殆どがその方法で栽培されたブドウから造られている事となり、個人的には素晴らしいことだと思います。そのワインが何十年後も楽しめるということ。日本のブドウは病害が多いのも問題なのかも知れませんが。

一方、日本ではどうでしょうか。ここから見てもニュージーランドのワインの品質の高さがうかがえますね。

先日時代を反映しているような面白いワインに出会いました。飲んだワインにVegan Friendlyと言うラベルが張られていたのです。ヴィーガンに優しいワイン。。。ご存知の通りヴィーガンは動物への残虐行為だという考えから動物性由来のものを取り入れないようにする生き方なので、そのワインは清澄に良く使われる卵やベントナイトと呼ばれる動物由来のものの使用をしていないワインという事。ちなみにワインの味は。。。もちろん普通のワインと全く変わりませんでした(笑)。

 

そして時代を反映しているワインと言えばナチュラルワイン」ではないでしょうか。オーガニックワインワインとどこが違うのか。自然派ワインに使用されているブドウは基本的にオーガニックワインですが、大きな違いは造り方です。大きくは極力人の手をあまり加えない造り方で、出来るだけ何も加えない(代表的なものは酸化防止剤)、自然酵母を使う、フィルターをかけない、清澄しない、などが特徴です。清澄したりフィルターをかけるのはワインの透明度を上げ雑菌を抑える目的が大きいのですが、澱には酵母やうま味成分が詰まっているのでワイン本来のうま味を閉じ込めて自然に近い味わいにするのが目的。なのでナチュラルワインは濁っているのです。

 

また、通常の白ワインの工程ではブドウの皮を除いてジュースだけを醗酵させるのに対し、ナチュラルワインでは皮も一緒に発酵させることも多いため、ピノ・グリがオレンジ色だったりします。いわゆるオレンジワインです。

日本ではここ10年くらいでナチュラルワインが爆発的に人気になりましたが、ニュージーランドではナチュラルワインを買えるお店や、提供しているレストランはまだまだ多くありません。

 

ただ、ここ最近新たなワイナリーが2軒も私の住むネルソンに出来たので飲む機会がありました!1つ目は日本人の方が造っているKunoh Wine(クノウ・ワイン)。

 

先日ネルソン市内のカフェでイベントがあり飲み比べてきました。ワインメーカーの人は京都出身で日本やオーストラリアでもワインを造っているそうです。ご自身が酸化防止剤に対してアレルギーがあり添加しないスタイルのナチュラルワインを造り始めたそう。白が4種類と赤が2種類あり、ニュージーランドではあまり見ないヴィオニエやピノ・ブランなども使われていました。ゲヴェルツトラミネールはあの華やかさは健在ですが、かと言って甘くもなく当日のバーベキュー料理ともとても合いました。そして結構な人がイベントに集まっていて、ナチュラルワインに興味を持つ人も多いみたいでした。

そして2軒目はUnkel Wines(アンクル・ワインズ)。ワインメーカーはニュージーランド人なのですがイギリスのバーで働いている時にナチュラルワインに出会い面白さから自分でも造ってみたいと思い、オーストラリアでワインを造り始めたそうです。2019年にネルソンに移り住み、元々違うワイナリーだった場所を買い取り、オーストラリアでやっていた時と同じワイナリー名でワイン造りをやっています。リースリングピノ・グリシャルドネピノ・ノワールが畑に植わっていて、どちらにしても少量生産なので面白いブドウ品種を試したいと一部をシュナン・ブランに植え替えたとのこと。1ヵ月前にボトル詰めをしたばかりでワインはどれも硫黄の香り。。。これはワイン造りの過程で酸素を極力入れないように造っているのでワインが酸素を求めて窒息している状態。グラスを回して酸素を吹き込んであげれば大抵の場合は本来の香りが戻ってきます。このように、ナチュラルワインは扱いで難しいこともあり、一般消費者への教育が必要だと言っていました。

試飲したワインの中で面白かったのワインがピノ・グリ(60%)とピノ・ノワール(40%)のブレンド「In My Mind」!どちらも除梗して一緒に醗酵させて2週間後にプレス、4分の3をステンレスタンクで4分の1を500Lのタンクで熟成。通常のワイン造りではありえない造り方です。。。説明を聞いてると頭が混乱しそうに!軽い赤ワインなのですが、タンニンは感じられて不思議なことに美味しい!ワインメーカーの人に「これは赤?ロゼ?」と聞くと「冷やし用赤」とのこと(笑)。ここのワインは日本にも輸出しているので出会ったら試してみて下さい。

ご紹介したようにワインは時代を反映して色んな造り方のものがあります。Vegan Friendlyやナチュラルワインはその代表的なもの。ナチュラルワインは造り方もある意味独特ですが(いや、シンプルと言った方が良いのかも?)、ラベルも独特で面白いものが多いです。邪道かも知れませんがワインのラベルからワインを選ぶのも選び方の1つです。また、ワインのラベルにオーガニックワインなどの情報が書かれてるものも多いので色々と試してみてオーガニックワインの新たな発見をしてみるのも楽しいですよ。

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